アメリカ合衆国憲法の 修正第1条(First Amendment) は、宗教・言論・出版・集会の自由と、請願の権利を定めた条文です。「言論の自由」や「表現の自由」が話題になるとき、アメリカで必ずといってよいほど引き合いに出されます。
修正第1条は、1791年に批准された 権利章典(Bill of Rights)― 修正第1条から第10条― の最初の条文です。わずか45語、ひとつの文で、これらの自由と権利がまとめて書かれています。
このページでは、修正第1条の英語原文を、文の構造から読み解いていきます。
アメリカ合衆国憲法 修正第1条(英語原文)
Congress shall make no law respecting an establishment of religion, or prohibiting the free exercise thereof; or abridging the freedom of speech, or of the press; or the right of the people peaceably to assemble, and to petition the Government for a redress of grievances.
出典:U.S. National Archives, “The Bill of Rights: A Transcription”
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アメリカ合衆国憲法 修正第1条(和訳)
連邦議会は、国教の樹立に関する法律、宗教の自由な実践を禁止する法律、言論または出版の自由を制限する法律、あるいは、人民が平穏に集会し、苦情の救済を求めて政府に請願する権利を制限する法律を、制定してはならない。
※ELMラボ訳。英文の語順と構造が見えるように訳しています。
文の骨格:Congress shall make no law
修飾部分を外すと、文の骨格はわずか5語です。
Congress shall make no law …
連邦議会は … 法律を制定してはならない。
| 文の要素 | 英語 | 意味 |
|---|---|---|
| 主語 | Congress | 連邦議会は |
| 述語 | shall make | 制定する |
| 目的語 | no law | いかなる法律も〜ない |
ここで押さえておきたいポイントが2つあります。
① 法令文の shall
法律や契約書の shall は、未来を表す「〜だろう」ではなく、義務や命令を表すことがあります。この文では、shall make no law 全体で「法律を制定してはならない」という禁止を表しています。
② make no law は「どんな法律もつくらない」
make no law は、not make any law と同じ意味です。英語では、否定の語を動詞ではなく名詞の側に置く言い方がよく使われます。「一つの法律も制定しない」という、強い否定の響きがあります。
law を説明する3つの語句:respecting / prohibiting / abridging
この文を長くしているのは、no law のあとに続く部分です。ここには、「どんな法律をつくってはいけないのか」が、-ing で始まる3つの語句で並べられています。
| # | 原文 | 意味 |
|---|---|---|
| ① | no law respecting an establishment of religion | 国教の樹立に関する法律 |
| ② | no law prohibiting the free exercise thereof | 宗教の自由な実践を禁止する法律 |
| ③ | no law abridging the freedom of speech, or of the press; or the right of the people peaceably to assemble, and to petition the Government for a redress of grievances | 言論・出版の自由、集会・請願の権利を制限する法律 |
3つの表現はいずれも、直前の law が「どのような法律なのか」を説明しています。ただし、文法上の形は同じではありません。
respecting は「〜に関して」という意味の前置詞で、respecting an establishment of religion は前置詞句です。一方、prohibiting と abridging は現在分詞で、それぞれ現在分詞で始まる語句が law を後ろから説明しています。見た目はどれも -ing で始まりますが、respecting だけは品詞が違う点に注意しましょう。
③ の abridging には目的語が2つある
③ の abridging(制限する)は、セミコロン(;)をはさんで、次の2つを目的語にとっています。
| abridging の目的語 | 意味 |
|---|---|
| the freedom of speech, or of the press | 言論の自由、または出版の自由 |
| the right of the people peaceably to assemble, and to petition the Government for a redress of grievances | 人民が平穏に集会し、苦情の救済を求めて政府に請願する権利 |
ここで手がかりになるのが句読点です。セミコロン(;)はコンマ(,)より大きな区切りを表します。abridging の目的語を2つに分けているのはセミコロンで、それぞれの中にあるコンマは、the freedom や the right の内部の小さな区切りです。とくに the right of the people は、to assemble と to petition の両方にかかっています。
or of the press は、or the freedom of the press の the freedom を省略した形です。同じ語のくり返しを避けるための省略で、英語ではよく見られます。
修正第1条が定める5つの自由と権利
構造を整理すると、修正第1条には次の5つの自由と権利が含まれていることがわかります。
| 自由・権利 | 原文の該当部分 |
|---|---|
| 信教の自由 | respecting an establishment of religion(国教樹立の禁止)/ prohibiting the free exercise thereof(自由な宗教実践の保障) |
| 言論の自由 | the freedom of speech |
| 出版の自由 | (the freedom) of the press |
| 集会の自由 | the right of the people peaceably to assemble |
| 請願の権利 | (the right of the people) to petition the Government for a redress of grievances |
信教の自由にかかわる前半の2つは、それぞれ Establishment Clause(国教樹立禁止条項)、Free Exercise Clause(信教自由条項)と呼ばれます。
文全体を語順どおりに読む
構造がわかったところで、英文を前から順に読んでみましょう。
| 英語 | 意味 |
|---|---|
| Congress shall make no law | 連邦議会は、どんな法律も制定してはならない |
| respecting an establishment of religion, | 国教の樹立に関する(法律) |
| or prohibiting the free exercise thereof; | または、宗教の自由な実践を禁止する(法律) |
| or abridging | または、〜を制限する(法律) |
| the freedom of speech, or of the press; | 言論の自由、または出版の自由 |
| or the right of the people | または、人民の権利 |
| peaceably to assemble, | 平穏に集会する(権利) |
| and to petition the Government | そして、政府に請願する(権利) |
| for a redress of grievances. | 苦情の救済を求めて |
最初に Congress shall make no law(どんな法律も制定してはならない)と結論が示され、そのあとで「どんな法律か」が次々に説明されていきます。結論が先、説明があとという英語の語順が、よくわかる一文です。
In Simple English
修正第1条の内容を、やさしい現代英語で言い換えると次のようになります。
Congress must not make laws that establish a religion or stop people from freely practicing their religion. It must not make laws that limit freedom of speech or of the press, or the right of people to gather peacefully and to formally ask the government to address their complaints.
原文を一語ずつ置き換えたものではなく、内容をやさしい英語で表したものです。
Words & Phrases
| Original English | Simple English / Notes |
|---|---|
| amendment | a change or addition to a law or document 憲法の「修正条項」。アメリカ合衆国憲法では、元の条文を書き換えるのではなく、修正条項を追加していく形をとります。 |
| respecting | about; concerning 「〜に関して」という意味の前置詞。「尊敬する」の respect とは意味が異なります。 |
| an establishment of religion | the government setting up an official religion 国家が特定の宗教を公認・優遇すること。「国教の樹立」と訳されますが、公式の国教を置くことだけでなく、政府による宗教への公的な支援も含めて論じられてきました。 |
| prohibit | officially stop; ban |
| the free exercise | the freedom to practice ここでの exercise は「運動」ではなく、「(権利や信仰を)実際に行うこと」です。 |
| thereof | of it ここでは of religion を指します。法律文書でよく使われる格式ばった語です。 |
| abridge | limit; reduce もとは「短くする」という意味で、an abridged edition は「短縮版」です。 |
| the press | newspapers and printed publications 印刷機(printing press)から、「出版・報道」を指すようになりました。 |
| peaceably | peacefully 現代では peacefully を使うのが一般的です。 |
| assemble | gather together |
| petition | formally ask 政府などに対して、正式に要望を申し立てること。 |
| a redress of grievances | a fix for problems or complaints redress は「是正・救済」、grievances は「苦情・不満」です。 |
コラム:修正第1条の主語が Congress であること
修正第1条の文法上の主語は Congress(連邦議会)です。つまり、この条文が「してはならない」と命じている相手は連邦であり、州ではありません。そのため、権利章典ができた当初は、州が宗教や言論を制限しても、修正第1条の違反にはなりませんでした。
その後、南北戦争後の1868年に成立した修正第14条をもとに、20世紀の連邦最高裁判所の判決を通じて、修正第1条の各保障が段階的に州にも適用されるようになりました(代表的な連邦最高裁判所の判決を節目としてみると、言論は1925年、出版は1931年、集会は1937年、宗教の自由な実践は1940年、国教樹立の禁止は1947年、請願は1963年)。この仕組みは incorporation(編入)と呼ばれます。主語が Congress であるという文法上の特徴が、アメリカ憲法史の重要なテーマにつながっている例です。
コラム:修正第1条は、もとは3番目だった
1789年、連邦議会は12か条の憲法修正案を各州に提案しました。そのうち、第3条から第12条までの10か条が1791年に批准され、現在の修正第1条から第10条(権利章典)となりました。つまり、今の修正第1条は、提案された時点では3番目の条文だったのです。
ちなみに、提案時の第2条(連邦議会議員の報酬に関する条文)は、それから約200年後の1992年に批准され、修正第27条として成立しました。
長い英文は「語順」で読める
修正第1条は45語の長い一文ですが、「Congress shall make no law」という骨格をつかみ、そのあとに続く respecting / prohibiting / abridging の3つの語句を順に追えば、前から意味を取ることができます。合衆国憲法の前文と同じく、骨格を保ちながら前から読む力は、どんな長い英文にも応用できます。

